オゼが次に目を覚ましたとき、太陽はほとんど真上まで昇っていた。うっすら開いた視界の端から、握りこぶし大の蟹が横断する。それは島の周辺に生息するイワガニで、小さな虫や海藻を求めては、あちこちの岩場をせわしなく巡っていた。 目の前を通過しようとしたところで、オゼは素早くその蟹をわしづかみにした。 口の... 続きをみる
2015年12月のブログ記事
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水平線のはるか彼方、じわりと光が溢れてくる。墨を流したような海と空が、ゆっくりと群青色に染まっていく。どこに身を潜めていたのだろう。巨人のような白い雲があちこちにそびえ立つ。今日も暑くなりそうだな。海岸の大岩にあぐらをかいて、黒髪の少年はぼんやりと思った。 彼は夜明けの空を見るのが好きだった。... 続きをみる